残された時間を、どう生きるか。緩和ケアにおける「予後予測」の大切さ
こんにちは。あおいろ訪問看護ステーション代表・管理者の大橋です。
在宅での緩和ケアにおいて、大切なことの一つに「予後の予測」があります。これは在宅に限らず、緩和ケア全般に共通する重要な視点です。
予後の予測というと、余命を伝えること、いわゆる「告知」を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、予後を予測する目的は、正確な数字を本人に伝えることだけではありません。
大切なのは、ご本人が残された時間をどのように捉え、その時間をどう過ごしたいと考えているかを知ることだと私は考えています。
残された時間によって、優先したいことは変わる
会いたい人がいる。
もう一度、行っておきたい場所がある。
どうしても間に合わせたい予定がある。

誰にでも、大切にしたい人や、やっておきたいことがあると思います。
そして、残された時間が月単位なのか、週単位なのか、あるいは日単位なのかによって、それらの優先順位は大きく変わります。
たとえば、数か月先に予定していたことも、残された時間が数週間だとわかれば、今できることを優先したくなるかもしれません。
遠くに住む家族に会いたいのであれば、体調が比較的安定しているうちに予定を立てることも大切です。
予後について考えることは、単に「あとどのくらい生きられるか」を知るためではありません。
その人にとって本当に大切なことを、実現するために考えることでもあるのです。
医療者は、どのように予後を予測するのか
医療者が予後を考える際には、患者さんの状態や経過を総合的に評価します。その際、判断を支えるためのさまざまな指標やツールが活用されています。
代表的なものとして、次のようなものがあります。
1.サプライズ・クエスチョン
「この患者さんが1年以内に亡くなったとしたら、驚くだろうか?」
この問いを通じて、医療者が患者さんの状態や予後について考えるきっかけをつくります。簡便な方法ですが、これだけで予後を判断するものではありません。
2.PPI(Palliative Prognostic Index)
全身状態を示すPPS、経口摂取の状態、浮腫、安静時の呼吸困難、せん妄といった項目から評価する指標です。
採血を必要とせず、患者さんの身体状況や生活の様子から評価できることが特徴です。
3.PaPスコア(Palliative Prognostic Score)
全身状態を示すKPS、臨床的な予後予測、食欲不振、呼吸困難、白血球数、リンパ球の割合などを用いて評価する指標です。
医療者による臨床的な判断と検査データを組み合わせ、予後を考える際の参考にします。
これらのツールは、それぞれ評価する項目や目的が異なります。また、予測には不確実性があり、結果だけで個々の患者さんの経過を断定することはできません。
患者さんの状態や変化を継続的に観察しながら、総合的に判断していくことが重要です。
数字を伝えるためではなく、その人の大切なことを支えるために
予後予測の指標を知ると、つい「あと何か月なのか」「いつまでなのか」という数字に意識が向きがちです。
しかし、私たちが本当に考えたいのは、その数字の先にある患者さんの人生です。
本人は今の状態をどのように感じているのか。
これからの時間について、どのように考えているのか。
会いたい人や、実現したいことはあるのか。
医療者の見立てと本人の認識が必ずしも一致するとは限りません。だからこそ、一方的に予測を伝えるのではなく、ご本人がどのように受け止めているのかを確かめながら、必要な情報を共有していくことが大切です。
正確な余命を言い当てることよりも、残された時間について本人と医療者が認識をすり合わせ、その人が大切にしたいことを支えられるかどうか。
そこに、予後を予測することの大きな意味があるのではないでしょうか。
一人ひとりの「大切な時間」に寄り添うために
在宅での緩和ケアでは、医療的なケアだけでなく、その人がどのように生きたいのか、ご家族とどのような時間を過ごしたいのかを考えることも大切です。
予後予測は、そのための一つの手がかりです。
数字だけを見るのではなく、その人が大切にしていることと、残された時間を照らし合わせる。
そして、本人やご家族の思いを尊重しながら、今できることを一緒に考えていく。
これからもあおいろ訪問看護ステーションは、一人ひとりの思いに耳を傾け、その方らしい時間を支えられるよう、日々の看護に取り組んでいきたいと思います。

