生き方を貫いた患者さん ― 緩和病棟での忘れられない出会い
こんにちは。
あおいろ訪問看護ステーション 代表・管理者の大橋です。
緩和病棟で働いていたときのことです。
ある患者さんは「自分の思いがあるから」と無保険で入院されていました。
所持金は200万円。
ご本人やご家族からは「これであとどのくらい入院できますか?」と尋ねられました。
MSW(医療ソーシャルワーカー)からは、「今からでも保険加入の相談はできるし、貯金を使い切れば生活保護の申請も可能です」
と助言を受け、その内容をお伝えしました。
しかし患者さんはこう言われました。
「そういうのは自分の生き方と違うので、なくなったら出て行きます」と。
結局、その方は2週間ほどで亡くなられました。
経済的に「お金が足りない」という状況には至らずに旅立たれたのです。
今でもこの患者さんのことは鮮明に覚えています。
もし保険や生活保護の手続きをされていたら、もしかしたら他の多くの患者さんと同じように、私の記憶から薄れていったのかもしれません。
けれど、この方は自分の生き方を最後まで貫かれました。
だからこそ、きっとこれからも私の中で忘れられない存在であり続けると思います。